2005年5月、World of Warcraftのギルド「PALS FOR LIFE」が公開した動画で、メンバーが自分の名前を叫びながら単独で敵陣に突撃し、パーティー全体の全滅につながるシーン。「後先考えずに突っ込む」ことを表すネットミームとなり、2017年に制作者側が演出だったことを認めた。
2005年5月、World of Warcraftのギルド「PALS FOR LIFE」が公開した動画で、メンバーが自分の名前を叫びながら単独で敵陣に突撃し、パーティー全体の全滅につながるシーン。「後先考えずに突っ込む」ことを表すネットミームとなり、2017年に制作者側が演出だったことを認めた。
何が起きたのか
World of Warcraftのダンジョン「アッパー・ブラックロック・スパイア」のルーカリーというエリアでの出来事です。ギルド「PALS FOR LIFE」のメンバーたちが作戦会議をしている最中、リーロイ・ジェンキンスというキャラクターを操作するベン・シュルツが突然、自分の名前を叫びながら突撃してしまいます。当然のことながら、パーティーは敵の集中砲火で全滅。その直後、倒れたリーロイのキャラクターが残した最後のセリフが「At least I have chicken!(少なくともチキンはあるぞ)」という妙に冷静な一言。この一連の出来事を記録した動画が、インターネット全体に拡散されることになります。


時系列:伝説の発生から「やらせ」告白まで
このミームがいかに大きな文化現象になったかは、以下の年表を見れば一目瞭然です。
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 2005年5月 | ギルド「PALS FOR LIFE」がリーロイ・ジェンキンスの動画をWarcraftmoviesで公開 |
| 2005年11月16日 | アメリカのクイズ番組「Jeopardy!」の問題として登場 |
| 2007年3月 | 地元紙Westwordがベン・シュルツへのインタビュー記事「The Legend of Leeroy Jenkins」を掲載。シュルツは「とんでもないキャラ名を考えて遊んでいた時」に作ったキャラだと語る |
| 2008年 | ブリザードがWoWに実績「Leeeeeeeeeeeeeroy!」を追加(ルーカリーの子竜を短時間で大量に倒す内容) |
| 2017年12月 | 撮影者のベン・ヴィンソン(ゲーム内ユーザー名Anfrony)らが、それまで未公開だった「最初のテイク」の映像を公開。制作者側が演出だったことを明かす |
最初のテイクが公開された時点で、制作者側は「誰も本物だと信じるとは思わなかった。明らかに風刺だと思っていた」という趣旨の発言をしています。つまり、最初から分かりやすいコメディーとして作られたものが、ネット全体で「本当に起きた出来事」として広がり、やがて文化の一部になってしまったというわけです。
なぜ伝説になったのか
公開から約半年後の2005年11月には「Jeopardy!」に登場するなど、ゲームの外まで広く知られるようになりました。


さらに重要なのは、この動画がゲームコミュニティの外へも広がったということです。当時のネット文化では、新しいミームが次々と生まれていた時代。リーロイ・ジェンキンスは「思慮なく行動する人」を表現する言葉として、WoWプレイヤー以外も使うようになります。つまり、ゲーム内の一つの出来事が、ネット全体の共通言語になってしまったわけです。
ブリザードによる公式化
ゲーム業界において、プレイヤーの文化がゲーム開発元に逆輸入される例は珍しくありません。しかし、リーロイ・ジェンキンスの場合は、その規模と公式化の程度が特筆すべきものでした。


これはゲーム業界における「コミュニティ尊重」の一つの表現形式と言えます。ブリザードが公式化することで、このミームはさらに拡大し、新しいプレイヤーにも認知されるようになりました。同時に、元の出来事がなぜそこまで愛されたのかを、新しい世代のプレイヤーが学ぶきっかけにもなったのです。
「やらせ」告白と制作者側の想い
2017年12月、12年以上の時を経て、撮影者のベン・ヴィンソン(ゲーム内ユーザー名Anfrony)らが、それまで未公開だった「最初のテイク」の映像を公開しました。これにより、元の動画が演出であったことが明らかになります。
興味深いのは、制作者側の意図です。ヴィンソンは「誰も本物だと信じるとは思わなかった。明らかに風刺だと思っていた」という趣旨の発言をしています。つまり、彼らは「これはコメディーだ」と信じていたにもかかわらず、ネット全体がそれを「実話」として受け取ってしまった。その後、それが大きな文化現象になってしまった。制作者側も、事態の大きさに驚いたのだろうと想像できます。


報道によれば、以前から「これは演出ではないか」という疑いを持つ人は多かったようです。しかし、真実が公式に認められるまでに、これほど長い時間がかかったという事実そのものが、このミームの文化的な重要性を示しています。なぜなら、真実よりもミームとしての価値が勝っていたからです。
ネット文化史における意味
リーロイ・ジェンキンスは、インターネット文化において特別な位置を占めています。それは単なるゲーム動画ではなく、「ゲーム発のミームがいかに拡散し、定着し、やがて公式文化に組み込まれるか」という過程を示す初期の代表例だからです。
Warcraftmoviesなどのゲーム専門サイトを通じて、この動画が広がりました。その後、掲示板やメッセージボードで「リーロイ・ジェンキンスをやる」「リーロイ・ジェンキンスみたいな失敗した」といった使い方が定着していきました。


まとめ
リーロイ・ジェンキンスは、単なるゲーム動画の失敗シーンではなく、インターネット文化における重要な転機を表しています。2005年5月に公開された一つの動画が、瞬く間にミームとなり、テレビのクイズ番組に登場し、やがてゲーム開発元に公式化されるまで到達した。そして、12年以上の月日を経て、その演出性が明かされた。
この一連の流れは、「ネット文化とは何か」という問いに対する一つの答えを提示しています。それは事実そのものよりも、共有された感情や記憶の方が重要であること。真実よりもミームとしての価値が優先されることもあること。そして、ゲームというプライベートなコミュニティから生まれた文化が、社会全体に波及する力を持つことです。
制作者側が「誰も本物だと信じるとは思わなかった」と語ったという事実は、意図と現実のズレがいかに大きかったかを示しています。彼らは冗談のつもりで作った一つの動画が、こんなにも大きな文化現象になるとは予想できなかったのです。そしてそれが、むしろこのミームを特別なものにしているのかもしれません。
参考にした情報源
- Kotaku: The Makers Of Leeroy Jenkins Didn’t Think Anyone Would Believe It Was Real (2017-12-25)
- PC Gamer: Leeroy Jenkins, World of Warcraft’s greatest meme, turns 15 today
- Westword: The Legend of Leeroy Jenkins (2007)
- PCWorld: World of Warcraft turns ten: 10 unforgettable moments
- Wikipedia: Leeroy Jenkins(一次資料への手がかり)
本記事は上記の公開情報をもとに構成しています。会話部分は解説のための演出です。
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