仮想世界「Second Life」でユーザーが運営していた「銀行」Ginko Financialが2007年8月に破綻した事件。年40%を超える高利回りを約束していたこの銀行は、ゲーム内ギャンブルの禁止により取り付け騒ぎが発生。約75万ドル相当の債務が生じ、Linden Labは翌2008年1月に無認可の仮想
仮想世界「Second Life」でユーザーが運営していた「銀行」Ginko Financialが2007年8月に破綻した事件。年40%を超える高利回りを約束していたこの銀行は、ゲーム内ギャンブルの禁止により取り付け騒ぎが発生。約75万ドル相当の債務が生じ、Linden Labは翌2008年1月に無認可の仮想銀行業務を禁止する規制を導入した。
セカンドライフとは何か
セカンドライフは、2007年前後に大きな注目を集めた3次元仮想世界です。ユーザーはアバターを操作して、他のプレイヤーと交流したり、建物やアイテムを製作・売買したりできました。重要な特徴は、ゲーム内通貨「リンデンドル」が現実世界の通貨と交換できたこと。当時のレートは、およそ250リンデンドルが1ドルに相当していました。このため、セカンドライフ内での経済活動が、現実のお金と直結する仕組みができあがっていたのです。
登録住民は900万人を超える規模にまで成長し、企業や教育機関も参入するなど、単なるゲームではない「もう一つの世界」として注目を集めていました。


Ginko Financialと高すぎる利息
セカンドライフの経済が拡大するにつれ、ユーザーたちは独自の「銀行」を作り始めました。その中でもっとも有名だったのがGinko Financialです。この仮想銀行は、リンデンドルを預けた住民に対して、年40%を超える利息を約束していました。
実は、Ginkoの利回りは時間とともに変化していました。2005年10月には日利0.19%(年換算で約100%に相当)という驚異的な利率だったのが、2007年2月時点では日利0.09%(年換算約39%)まで低下していました。それでも、通常の金融商品と比べれば、信じられないほど高い利回りです。
この高さの背景には、セカンドライフ内のギャンブルなどからの収入を見込んだ運営戦略がありました。多くの仮想銀行が、こうした高リスク・高リターンのビジネスから利益を上げ、預金者に高い利息を払おうと考えていたのです。


ギャンブル禁止がもたらした危機
2007年の夏、転機が訪れました。Linden Labがセカンドライフ内のギャンブルを禁止したのです。これは仮想銀行の経営基盤に直撃しました。高い利息を払うために頼りにしていたギャンブル収入が失われたからです。
この禁止措置に対応して、Ginko Financialは2007年7月に払い戻しを停止し、預金者の口座を「Ginko Perpetual Bonds」(ギンコ永久債券)という債券に一方的に転換してしまいました。この債券は二次市場で大きく割り引かれて取引され、実質的な価値が失われていきました。
やがて2007年8月、Ginko Financialは支払不能を宣言し、破綻しました。預金者に対する債務は、約2億リンデンドル(約75万ドル相当)に達していました。


Linden Labの仮想銀行禁止
Ginko Financialの破綻は、セカンドライフの「経済」に警鐘を鳴らしました。Linden Labのもとには、銀行運営者にだまされたと訴えるユーザーからの苦情が相次ぎました。
対応を迫られたLinden Labは、2008年1月8日、重要な規制発表を行いました。セカンドライフ内で、現実世界の銀行免許などの認可を持たない者が、利息付きの預金を受け入れることを禁止するというものです。禁止理由として、以下の3点が挙げられました。
- 住民がだまされたという苦情が複数寄せられたこと
- Linden Labが預金者を保護する手段を持たないこと
- こうした取引の法的な位置づけが不明確なこと
この禁止措置は2008年1月22日から施行されました。施行後は、複数の仮想銀行にユーザーのアバターが押しかける取り付け騒ぎが相次ぎました。ユーザーたちは、自分の資産をリンデンドルから現実の通貨に換える必要に迫られたのです。


日本での報道と受け止め
セカンドライフは2007年前後、日本でも注目を集めていました。そのため、Ginko Financialの破綻と仮想銀行禁止についても、日本メディアが報じました。
特に注目すべきは、J-CASTが2008年1月に「セカンドライフで取り付け騒ぎ 仮想銀行閉鎖で換金不能」というタイトルで、銀行禁止の発表と取り付け騒ぎの実態を報じたことです。J-CASTは、複数の仮想銀行がユーザーから資金を集め、セカンドライフ内のギャンブルなどからの収入を見込んで高金利で運用していたこと、そして禁止発表後に多くのユーザーのアバターが銀行に押し寄せ、ATMが作動しなくなるほどの混乱が生じたことを記録しました。
この報道を通じて、セカンドライフという仮想空間の経済問題が、単なるゲーム内の出来事ではなく、現実の金銭損失と規制措置が絡む重大な事件だと日本でも認識されるようになりました。


この事件が示したもの
Ginko Financialの破綻と仮想銀行禁止の事件は、いくつかの重要な教訓を残しました。
第一に、仮想空間の経済にも現実の金融メカニズムが適用されることを示しました。取り付け騒ぎ、ポンジスキーム的な構造、規制に対するパニック反応——これらはすべて、セカンドライフという「ゲーム」の中でも発生したのです。仮想であっても、実の金銭が絡む限り、金融の本質的な危機は変わらないということです。
第二に、プラットフォーム企業(この場合はLinden Lab)が、自分たちの世界で起きる金融トラブルに対して、どう対応するかという課題が浮き彫りになりました。禁止措置は保護的でしたが、同時に多くのユーザーを混乱させました。この葛藤は、その後の仮想通貨やメタバースの議論でも繰り返されることになるでしょう。
第三に、規制がない環境でも詐欺的な仕組みは出現すること、そして被害が現実の損失につながることが明白になりました。法的な保護がない中で、ユーザーたちは自らの判断と信頼だけを頼りに投資していました。その脆さが露呈したのがこの事件です。


まとめ
セカンドライフの仮想銀行Ginko Financialの破綻は、2007年から2008年初頭にかけてのネットカルチャーを代表する事件の一つです。年40%を超える高い利息を約束していた仮想銀行が、Linden Labのギャンブル禁止とそれに続く規制によって、わずか数ヶ月で経営危機に陥り、最終的に破綻しました。
この事件の重要性は、単にセカンドライフ内のトラブルではなく、以下の点にあります。仮想空間における経済活動でも、現実の金銭損失が生じる以上、取り付け騒ぎやポンジスキームといった金融上の悪質な事象は出現し得ること。プラットフォーム運営企業は利用者保護と経済活動の自由のバランスを取る必要があること。そして規制の導入自体が、かえってパニックを招くというパラドックスです。
日本でも報道された今回の事件は、その後の仮想通貨バブル、ICO詐欺、NFT投機熱など、ネット上の金融トラブルが繰り返される際の歴史的な参照点となりました。技術は進化し、プラットフォームは変わっても、人間の欲望と不安の基本的なメカニズムは変わらないということを、この事件は教えてくれるのです。
参考にした情報源
- TechCrunch: Virtual Banking Banned in Second Life (2008-01-08)
- NBC News: Second Life bank crash foretold financial crisis
- MIT Technology Review: Financial Woes in Second Life (2007-10-15)
- Virtually Blind: Law Journal Says Ginko Financial Probable Ponzi
- J-CAST: 「セカンドライフ」で取り付け騒ぎ 仮想銀行閉鎖で換金不能(2008-01-29)
本記事は上記の公開情報をもとに構成しています。会話部分は解説のための演出です。
このカテゴリの人気記事
ゲームをもっと楽しむためのおすすめデバイス
※ 上記リンクはAmazonアソシエイトリンクを使用しています
このカテゴリの用語をもっと見る

